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◆ライブシナリオとは
 ライブシナリオとは、01月11日からの寒おで2014の中で開催されるイベント「ディアボナイト」の1企画です。
 公開されたオープニングに対して、寒おで参加者がその場でプレイングを書いて、寒おで参加MSがリアルタイムでリプレイを仕上げる、というものです。
 ライブシナリオののオープニングとリプレイは、寒おででの進行状況に合わせて、こちらでも公開されていきます。
 寒おでに参加されていない皆様は、参加されているお客様の活躍にご期待ください。

 定山渓危機一髪 蝿の王来たれり〜

 第1ターン:戦慄の百鬼夜行! アバドン大進撃!


 ここ、日本国北海道札幌市南区定山渓は、滅亡の危機に瀕していた。
 何故か!
 キニスが溢れている!
 何故か!
 カオスが溢れている!
 真冬の北海道の憩いの場、みんな大好き温泉地が、今や怒りと殺意と引き篭もり! 狂気と敵意と引き篭もり! そんなヤバイモノで染め上げられてしまっているのだ! ついでにどっかのクラーケンの触手も、伸びる伸びる!
 この地を訪れた観光客の皆さんは一般人である。ゆえに! 抵抗の余地もなく、キニスとカオスの影響を受けて、温泉でのんびりせざるを得ない状況に追いやられてしまっている!
 ――温泉地ならそれが普通じゃね?
 なんてツッコミはナンセンスだ! あーあー聞こえなーい!
 そして、滅亡の危機に瀕しているのは定山渓だけではない。
 今まさに、世界滅亡の危機が、ここから始まろうとしているのだ!

「フハーッハハハハハハハハハハハ! 見よ、我が軍勢を! 見よ、我が偉容を! 我こそは蝿騎士団が第一の騎士、アバドンなり! 愚かなる人間共よ、今こそ、完膚無きまでに蹂躙してやろうぞ、ありがたく思うがよい!」
「そう、我等こそ、真に我等こそが世を統べたる力! 我等栄光のディアボルスは、今こそこの冷たき夜の下に家畜たる人間共を屠殺し、食肉加工業者の如く美味しく調理してくれるわ!」
「さぁ、人間共よ、我等にホスティアを捧げるがよい! このHOT泉の中で、いっときの愉楽に興じ、その果てに苦痛と後悔にその心を満たすがよい! 貴様らの苦悶の声こそが、我が耳には心地よいというものよ!」
「「「フハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」」」

 と、吹雪の下、どっかの高い建物の屋上から定山渓を見下ろしている幹部魔将アバドン。
 その数、多分1000体くらい。
 嗚呼、なんと恐ろしいことだろう。この地に満ちるキニスとカオスは、全てディアボルスの企みによるものであったのだ!
 見たまえ、群がる魔将達の恐ろしき姿を!
 バッタ頭。
 バッタ頭。
 バッタバッタバッタバッタバッタ、バッタ頭!
 なんと禍々しき光景か。それはまるで、聖書に預言された世界の終末を思わせる有様ではないか!
 これも全て、仙級ディアボルスのルシファーとベルゼブブってヤツの仕業なんだ!
「フッフッフ、さすがはベルゼブブ様よ、この場所ではすこぶる調子がよい! そして、未だ逃げ出しもせぬ人間共。よほど我等に蹂躙されたいと見える。ならばその願い、叶えてくれようぞ! 往くぞ我々よ! 今こそ戦いの時、この定山渓をギッタンギッタンにしてやるのだ!」
 押し寄せる、アバドン×1000!
 もはや定山渓の平和は風前の灯火である。
 すでに、定山渓ビューホテル以外の場所は全て忌まわしきアバドン×1000によって制圧されてしまった!
 この事態を打開できるのは、君達SINNとドラグナー達しかいない。
 さぁ、準備ができたならば立ち向かいたまえ、アバドン軍団を駆除するのだ!
「させぬ! させぬぞ! このアバドンの手によって、貴様らはここに潰える! ディアボナイトは第1話で終わるのだ! 第1部、完! ご愛読ありがとうございました! という文章と共になァ!」
 アバドン様、あんまりメタネタはよしてください。


定山渓危機一髪 蠅の王来たれり 第1ターンリプレイ

担当MS:北野旅人


 茂武 園一は偵察していた。と同時に温泉に入っていた。
 とりあえず彼の中の人、じゃなかった本人というかまあとにかくソッチから説明すると、園一はいつになく下半身も丸出しで屋上露天風呂『星天』に浸かっていて、そこは氷点下でみんなぶるぶる震えているのだが園一は大丈夫だ、肩までしっかり浸かって、顔だけは黒子マスクをしているから。
「偵察てーさつー」
 と黒子マスクがつぶやく頃、その園一操るパペット『ピンクィ☆モーム』は、キティドラゴンの背に乗って飛んでいた。そう、アバドン軍団を偵察するために――
「まあ、調査するまでもないんだけどな」
 メッサー・ファフニールはぼんやりと言った。調査と言われても、ホテルの周囲には空を覆い尽くさんばかりのアバドンが空狭しと飛び回っており、そこらじゅうのホテルの屋上に直立しては腕を組んで人間を見下している。
 さて、メッサーの参加する『チームTG』は、他に3人。アビス・フォルイン。イケメンだ。エルネスト・ブノワ。池面だ。あ、メッサーもイケメンだ。そしてメイリア・フォーサイス。この麗しき女子はエルネストの恋人である。いや婚約者だったかもしれない。あるいはこの世界ではすでに結婚していたのかも‥‥
「メイ、ごらん。こんなにたくさんのアバドンを一緒に眺められるなんて‥‥新婚旅行はここにしてよかったわね」
 結婚していたらしい。
「うー、エルと一緒なのは嬉しいのですけどー‥‥できればマリモがよかったですー」
「じゃあ、今度はマリモ1000匹見に行きましょう。でも、その前に」
「ええ、やっつけないとですー!」
 2人は手と手ではぁとマークを作り、ビームを出そうとしたがうまくいかなかったので、とりあえずアビスに託した。
「お、俺に振られてもな‥‥とりあえず退魔魔法を使ってみるよ! えーっと、ハイパー・聖書投げ!」
 アビスの手から光輝く聖書が投げられ、宙を舞うアバドンの1匹に当たった! 軽傷ダメージ!(アバドン残り1000匹)
「よし、お前らがアホな事やってる間にすっげー錬金をしておいたぜ。この『定山渓の粉雪』と『マジック☆スパイス』でアルケミーかなんかして出来た眼鏡をかけると‥‥あきらかに素材相違な気もするけど、キニスが視認できるんだぜ!」
 メッサーはそれをはめた! そしてのけぞった!
「目がぁ、目があああぁぁぁぁぁん!!」
 メッサーは失明し、ふらふらとよろけて温泉にドボンと落ちた。

「ふはははははは! 愚昧なる人間どもよ! 我輩を倒そうなど1000人足らんわ!」


 レスター・ヘルツォーク、神代 翼、マーヤ・ワイエス、ナチュール・ゼターは、おおかまに言うとアバドンを一か所に集めてから『本体』を見つけてそいつをやっつければいいだろうと考えた。いい考えだと先生は思う。
「よし、俺がアバドンを惹きつけるよ! おれをみてくれええええ!」
 翼は『魅惑の下着』を装備した! これで彼は、当社比1.2倍で魅力的になった!
 ――にも関わらず、おお、なんという事か、アバドンは1匹も寄ってこない!
「なぜだ、俺の何がいけないんだああああ!」
「愚かな虫ケラめ! 貴様がいけないのではない! 我輩達がイケすぎているのである!」
 そう、アバドンは自分の美しさを知り尽くした存在! 翼が逆立ちしたってモロ出ししたってアバドンの気を惹くことはできるわけがなかった!
 うおおおおん、と泣きながら温泉にダイブする翼はさておき、マーヤとナチュールは2人同時に『大探知魔法』を使った。
「ククク、これを2人合わせて使えば本体がわかるはず!」
「ダブル・ウルトラサーチ・アンド・アバドンデストロイ!」
 しかし――本体はわからない、というより、なんと1000匹全部本体だった!
「ふははははは! 我輩ほどのイケ魔将ともなれば、1000人全部本物と主張するのも造作もない!」
 主張の問題なのかはさておき、全部本物ならとりあえずどれでもいいだろう、とレスターは『魔法の剣』を握ってつっこんだ!
「我、夜戦ニ突入ス! まだ昼だけど!」
 ザクッ、と切ったら中傷ダメージ!(アバドン残り1000匹)  と、そこで意味も無く唐突にKKKとかいう出てきちゃいけない系のホーキポーキが登場し、「エロエロなのだよ〜」と言いながらナチュールになんかかけた。ナチュールは呪われていたので(でろでろでろでろ)、浴衣が不自然な勢いではだけ、まあその色々と大事な部分は守られたのだが、
「あひゃああああ!?」
 さっきまで飛んでいたキティドラゴン(withピンクィ☆モーム)が、そのおしりをベーロベロし始めてしまい、ええとまあその「ふはははははは! そんななまっちろいおしりで我輩のナイスヒップに対抗できると思っていたのか! 最近だらしないであるな!」


「まずは少しでも数を減らさないと!」
「頑張ります‥‥!」
 柴神 壱子のパペット『ゴンスケ』とシア・ラストラルのパペット『イオンさん』は、一生懸命にアバドンを追いかけ回したが、なにせ1対1000である。ふははははとかわされうまくいかない。
「ううー、なんとか温泉に誘い込みたいのに‥‥」
 じだんだするゴンスケ。
「ならば私が交渉してみましょう☆」
 須経 蘭華は得意の交渉術で、アバドン軍団を温泉に誘い込む。
「アバドン様アバドン様、お風呂おひとついかがです?」
「そんな見え見えの誘いに乗るほど我輩らが単純だと思ったか、バカめ!」
「では、一番強いアバドン様からかかってきてください☆」

「「「「「「「「それは我輩だ!」」」」」」」」

 アバドンが一斉に露天風呂に飛び込んだ!
「やりました!」
 スジャーター・バニヤンはガッツポーズ。ホーキポーキたる彼女の錬金で出来た『浄化の素』は、湯船全体に広がり、これに浸かっていると浄化されてしまうのだ!(悪魔は死ぬ)
 しかし、である――次々と風呂に入り、湯船はあっという間にアバドンでイモ洗い状態に――さらにさらにアバドンが差し込まれ、お湯はどんどん流れ出てしまい。
「湯が、湯が足らんではないか! 女将を呼べっ!」
 浄化効果のある湯はすっかりなくなり、そしてアバドンはぷんぷんと怒りだす始末。
「えーっと‥‥一番いいアバドンさんは‥‥」
 シアは山に誘導しようとしたが、

「「「「「「「「それは我輩だ!」」」」」」」」

 シアはアバドンの雪崩に飲まれ雪山に消えた(ただし5分後にゴンスケに発掘された)。


 もはややりたい放題のアバドン軍団。このままでは定山渓じゅうのほかほか観光客がエサにされてしまうだろう。たぶん。
 最後の望みは、チーム『フランソワーズ』に委ねられた。

「バッタごときに世界を、というか温泉を蹂躙できると思うなよ! 消え失せろ虫ケラあぁっ!!」
 キュリロスは魔法の剣をぶんぶんした。1匹にラッキーヒットして重傷ダメージ(残り1000匹)
「ふむ、バッタといえば農薬だな」
 ダール支部長は、おもむろに散布マシンを取り出し、上空へ向け噴霧し始めた。
「究極魔法! マラチオン! マラチオン! マラチオン! ‥‥ところでマラチオンって唱えてるとなにかいたたまれない気分にならないかね?」
 それはさておき、アバドン50匹に軽傷ダメージを与えた!(残り1000匹)
「くそお、水の王国にいるパラっ子達をみていたのに、あのバッタ達はなんなんだYo! 早くやっつけてパラっ子はぁはぁするZe!
 ってあんなところにかわいいパラっ子が!! ぶっほおおおお!!」
 アシル・レオンハートは強烈に鼻血を出して――死んだ(ズコー!)。

「嗚呼みにくい! なんとみにくい悪魔!」
 フワンソワである。彼はアバドン達にプンスコしている。
「貴様、美というものが解っておらぬようだな‥‥美しきものが勝つ! それが地獄の真理!」
 アバドンが挑発すると、フランソワはキラキラと輝きを放ち、不敵に微笑んだ。
「ふふふ、勝てば美しいと認めるのだね‥‥ならば勝ってみせるといい、僕が選りすぐりの美しき人1000人を集めたのだから!」
 フランソワ、なぜか腹筋しながらハッタリをかました! しかし考えるまでもない――フランソワのいう1000人というのはさすがに嘘だ。
「いいや嘘じゃないぜ! 1000人でポージングする俺、美しい!」
 おっとぉ、ナルシストな点にかけてはレクシィ史上で20本の指に入るであろうビート・バインが、見よ、山脈の向こうでキッカリ1000人いる! 1001人いる!? いや1000人です。それらがこう、まあいい具合におのおのナイスポーズデェス。
「悪魔討つべし! 撃つべし! うたえ我が愛銃、二丁拳銃×1000!」
 おや、反対の山にはアドリアンが1000人いるぞ!?
「アドリアンもナルシストだったっけ?」
 アビスの質問に答える者は――僕だけだ! YES! YES! YES!
 おっと目を離してるスキになぜかフランソワも1000人いるぞ!
「なんで僕が1000人いないのかな!?」
 ナチュールの抗議はもっともですが、容量オーバーです!
 さて、フランソワ1000人+ビート1000人+アドリアン1000人vsアバドン1000匹! 勝敗はいかに――
「虫ケラどもめ! 次号を待つがいい!」
「そうはイカキン!」
 レスターがツッコんでる間にアバドン無双猛将伝もついに決着が。まあその、アバドンはすっかり駆逐されて定山渓にはそれぞれ800人前後のビートとかの死体が残ったが。
「ハハッ僕は大回復魔法を持ってるからね(キラキラァ)」
 フランソワが☆を振りまくと、死んでいたン千人のアドリアンとかはむっくりと起き上がり、あー死ぬかと思ったとか言いながら山の向こうへ帰っていった。
「まったく死ぬかと思ったではないか」
 せっかく倒したアバドン1000匹もモコモコ起きあがってはブーンと空へと帰っていった。
「う‥‥ここは一体‥‥ブーッ!」
 アシルも生き返ったんだけど、目の前になんかモエモエキュンなパラッ子を見たらしくて再び鼻血を吹いて――死んだ(ズコー!)。

 こうして定山渓に平和が訪れたのだった。



「ゲロゲロゲロッパー!」
「フンニャアアアアア!」
「バァァァァァァアァァァァァァルゥゥゥゥゥゥ!」

 しかしバアルが降り立った! ホテルの真横にズドンと!
 しかもただのバアルではない。ええと、ホテルの高さと同じだけど身長があるビッグ・バアルだ。16階建に相当するバアルだ。巨大化したのか、いつものバアルと違うバアルなのかはわからない。とにかくでかいバアルなのは確かだ。

 キュリロスは、ピーッと口笛を吹いた! しかしもう3000人のフランソワとかは戻ってこない!
 蘭華はラァァァァンンンンカァァァァァァとコンタクトを試みた! ダメだった!
 ダールはマラチオンをかけた! しかし何の効果もない!
 マーヤはとりあえずワーハッハッハと笑った! しかし、なにもおこらなかった!
 園一は、湿気て顔に貼りついたマスクで窒息しかけている!
 メイリアとエルネストは‥‥貸切風呂がないかどうかでフロントとモメている!
 翼は1000人に増えたがっている!
 アシルは死んでいる!
 さあこの先の展開は――
「エロエロなのだよ〜」
 とKKKさんが言ってますがM木さん大丈夫ですかね?
「絶対リームーよ」
 とエルネストさんが言いましたそうですか。 「イオンさん、巨大化‥‥」
「ゴンスケ、巨大化‥‥」
 乞うご期待!


定山渓危機一髪 蠅の王来たれり 第2ターンリプレイ

担当MS:真名木風由


 温泉に落ちたメッサー・ファフニールは、何だかよく分からない内にプチッと踏み潰された。
 踏み潰されたメッサーは、ペラペラの紙になって、風に乗って家まで飛んでいく。飛行機代浮いたね、やったぁ、メッサー!!

「そんなことはどうでもいいわ」
 エルネスト・ブノワは、フロントに交渉してラグーンを占拠していた。
 ぶっちゃけ自分の行動がK野さんにスルーされたので、やる気ゼロ、メイリア・フォーサイスとのラブラブに勤しむことにチェンジ。
「エルが誘惑に負けないよう神様にお祈りするのですー」
「大丈夫よ、メイ。私の可愛いメイ以外目に入る訳ないじゃない」
「エルー‥‥照れちゃいますー‥‥」
 巨大化したバァルゥを完全にスルーし、新婚夫婦の甘ったるいオーラを放出する2人。
 爆ぜてしまえと周囲から声が上がるが、ちっとも聞いちゃいない。聞けよ。
「そんなことはどうでもいいよ。メッサー亡き今、俺達だけでバァルを倒さないといけない。もうこの2人は戦力外だから、放置プレイでFA」
 アビス・フォルインがツッコミしつつ、バァルに聖書を投擲。
 でも、巨大化したバァルに通常サイズの聖書を投擲したとして、一体それが何になるのだろう。軽傷にすらなりはしない。ダメージ? ゼロゼロ、そんなもんはゼロ。
 というか、アビス、聖職者なのにそんなに聖書投擲しまくっていいんだろうか。いや、これも信仰の形、考えてはいけない。
 そこに颯爽と現れたのが、フリッツ・ギュンター、彼はジンギスカンを食べていたら参戦に遅れ、ちょっと混乱していた。
「よ、よく分からんが、斬る!」
 脳筋のフリッツは、バァルの足元を狙いちくちくと攻撃を始める。
 例えるなら、足に爪楊枝で刺しているような感覚だが、痒いだけでノーダメージ。ダメージなんてものは通りはしない。
「ふにゃ〜〜にゃにゃにゃ〜〜ん♪」
「ゲロ〜〜クワックワックワッ♪」
「バァァァアァァァルゥゥゥ♪」
 あ、やばい、イイツボ押しちゃって、巨大バァルが余計元気になっちゃった。
 バァルはスキップでビューホテルの周囲を駆け巡る。


「ククク、水攻めだ!!」
 マーヤ・ワイエスは、定山渓ダムを目指して突き進んでいた。
 しかし、外はメッチャ吹雪いていて、マーヤの存在をディスる。
「くそ、こうなれば、自衛隊真駒内駐屯地の戦車を‥‥」
 が、その前にマーヤは雪でフッツーに遭難しそうになり、ビューホテルへ引き返そうとする。
 こうなれば、自衛隊真駒内駐屯地から戦車の要請だ!!
「にゃにゃにゃ〜?」
「ゲロゲロゲロ?」
「バァアァルゥ?」
 萌えキャラの如く小首を傾げたバァルは、戦車をプチッと踏み潰した。
 その拍子に舞い上がった雪に埋もれるマーヤ。
 慌てて、ビューホテルの職員が雪かきをしてマーヤを助けた。ヨカッタネ!

 ‥‥というのを、神代 翼は、ビューホテルのラウンジから見てた。超見てた。
「こうなったら、俺に秘策がある」
 翼は、皆を見つめる。
「それは、館内放送で奴を呼び出す」
「奴って誰だYO?」
 アシル・レオンハートは、鼻を押さえつつ。
「奴は奴だよ! フィーリングで分かろうよ!」
「そんなこと言われても‥‥は!? あのバッタはいなくなったんだNE!!」
「うん、でも巨大バァルが出てる。俺は寒いから、出たくないんだ」
 翼の解説にアシルは何を思ったか、いきなり服を脱ぎだした。
「あの、俺、そういう趣味はチョット」
「何を言ってるんだYO! 俺がすべきことはひとつだけだYO!」
 翼が引いていると、アシルは飛行フンドシをつけた状態で外へ飛び出した。
「アイキャンフライ!!」
 ビュビュビューン、アシルは16階まで一気に飛んだ。
「やっぱ俺出来る子だYO!!」
「キャー」
 何故かビート・バインも屋上の露天風呂で全裸仁王立ちで悲鳴を上げていた。
「ギャー」
 アシルは目から血が流れると、雪の中に墜落していく。
「フッ、美しさだけでドラグナーを倒せる、俺やっぱり最高」
 ビートは下半身のガードもせずに極寒の空の下立っていた。
 狙いはただ、ひとつ。
 バァルの口、それだけ!!
 しかし、濡れた身体(意味深)で鎧の上なんぞに飛び移れば、あとはお察しください。
 ビートは、バァルの鎧の上に着地と同時にカチンコチン、凍死しましたとさ。


 茂武 園一は、地下の大浴場にいた。
「ふぅ〜、温かいね〜」
 なんて、余裕ぶっこいているが、顔だけ黒子マスクで首から下はマッパという子供が泣き出すレベルの装いをしている。
「『巨大化』って『状態異常』だよね? よーし、こうなったら!」
 パペットのモームちゃんが颯爽と忍犬に跨る。
「私の解毒草も使えば、確率的に状態異常を打ち消すことが出来る筈です!」
「わんわんっ!」
 レスター・ヘルツォークと忍犬は分かり合い、共にロビーを飛び出した!!
「さぁ、解毒草を‥‥」
 しかし、バァルの顔は16階以上の高さにあり、忍犬では到達出来ない。
「イケメンなのだよ〜」
 KKKとかいうホーキポーキを踏み台にしてレスターが乗り、更に忍犬を高い高いしても届く訳なんかもない。
「ぐええ、なのだよ〜っ」
 KKKも力尽きてしまったので、KKKを放置してレスターと忍犬はビューホテルの中に戻った。
「ひどいのだよ〜!!」
 KKKが腹いせにアルケミーすると、何故かフランソワ・ローランサンが巨大化した。
「ちょっと待ってほしい」
 フランソワが困惑した声を出す。
「僕は合体することを望んでいたんだが‥‥」
 生憎、意思疎通がバラバラで合体グランドフランソワにはなれなかったようだ。
「それでも、大きくなれたなら、好機。醜き悪魔、バァル。僕と卓球で勝負だ!」
 スリッパを素振りしているフランソワにバァルが振り返った。
「ふにゃああ?」
「げろげろ?」
「バァァァアァァァルゥゥゥ?」
 あざとく小首を傾げるバァル。
 その姿にフランソワはすっかり魅了された。
「僕はバァル君と共にこの北海道を常夏の国へと生まれ変わらせるよ!」
「ナンダッテー!」
 キュリロス・プロントがキャラをかなぐり捨てて叫んだ。
 屋上の温泉に潜んで隠れていた彼、あまりの急展開に思わず顔を出したのだ。
「フッ、キュリロス君、この北海道、寒すぎるのがいけないのだよ」
 横薙ぎのスリッパがキュリロスをピンポン玉のように打ったかと思うと───
「馬鹿め、コメディでなければ死んでいたぞ!」
 やっぱりピンポン玉のように戻ってきた。


「本当に訳が分からない温泉ですね」
 アドリアン・メルクーシンは、温泉の力で巨大化する。
 ついでにナチュール・ゼダーも温泉の力で巨大化した。
「ホント、僕がエロエロ要員とかありえないし! 第一、まともに喋ってないじゃない、ソイツ!!」
「気が合いますね、私も同じことを思っていましたよ」
 ナチュールの言葉に凄絶な笑みを浮かべたアドリアン、何故か金銀パールプレゼントな鎧を身に纏い、豪華そうな剣を構える。
「私こそが神の剣、私の、神の剣!!」
「何かよく分からないけど、僕を差し置いて目立ってるなんてアリエナイ!! アリエナイ!!」  アドリアンがメッチャノリノリでバァルを斬っていると、自分より目立っていることに腹を立てたナチュールがKKKを踏み潰しつつ、魔法の杖を2本構え、効果上昇のガイアをズバーンッ!!
「死んじゃえ☆ 僕知らない☆」
「これが、RINさんクオリティですか‥‥ッ!!」
 アドリアンはそう言って、元の姿で温泉の中に落ちていった。
 あ、ちゃんとキュリロスがアドリアンを回収したので、そこの所は安心してください。


「天が呼ぶ地が呼ぶ柴が呼ぶ‥‥!!」
 柴神 壱子は屋上に降り立った。
「そう、真打ち登場とはこのことですよね」
 スジャーター・バニヤンも気合十分。
「壱子さんのダブルゴンスケ、シアさんのパペット、イオンさん、キティドラゴンのテトラさんを3分間巨大超強化する紅茶を舐めていただきました。フフフ、紅茶好きキャラを舐めないでもらいたいものですね!」
 そう、山の向こうからパペットと忍犬のダブルゴンスケの上にパペットのイオンとキティドラゴンのテトラがそれぞれ騎乗した姿で参上した。
 と、何か温泉の力でダールの愛犬ポチも大きくなってビューホテルの影から姿を現す。
「さぁ、これで、大きく‥‥」
 しかし、ポチはお腹が空いていた。
 仕方ないので、ダールにおねだりのポーズ。
 これはあげざるを得ない!!
「何かポチさんが戦力外だけど‥‥GO、ゴンスケーズ!!」
「ホテルを、傷つけないよう‥‥頑張って、ください、ねー」
 壱子とシアの号を受け、ゴンスケーズが突進する。
「「わんわんがおがおビーム!!」」
 バァルが雪溜りの中にブシャーと突っ込む。
 チャンス!!
「ククク‥‥我々に楯突いた己の不幸を呪うがいい!!」
「ふにゃにゃ!?」
「グワッグワッグワッ!?」
「バァァァアァァァルゥゥゥ!?」
 須経 蘭華がどっちが悪役だか分からない言葉を吐いて、巨大バァルを大封印。
 最後オイシイ所を掻っ攫っていった。

 その時だった。

「ちょっと困るなぁ。これじゃあ、北海道常夏化計画が全然駄目じゃない」
 屋上の温泉に同化していたベルゼブブが一気に形をとると、でろでろに流れ出て、ビューホテルを覆っていた。
 しかも、すぐに寒くなって、ベルゼブブは雪の結晶を取り込んで、シャーベットベルゼブブになっちゃってる。
「僕は寒いのが大嫌いでねぇ、こんなに寒いのはいやだから、常夏の北海道がいいんだよねぇ」
「だったら、移住しろ!!」
 ブーイングのSINNとドラグナー。
 しかし、ベルゼブブは言う。
「僕のお肌とここの温泉、相性がいいから駄目なんだよねぇ」
 肌なんかどうでもいいだろ、ハッキリ言って!!

 こうして、SINN達とドラグナー達は、巨大シャーベットとなり、ビューホテルを取り込んだベルゼブブと最終決戦に臨むことになる。
 負けるな、SINN、負けるなドラグナー!
 定山渓温泉の明日は君達に(多分)掛かっている(筈)!!


定山渓危機一髪 蝿の王来たれり 最終ターンリプレイ

担当MS:楽市

●寒おで2014(夏)
「よいじょオ」
 体長、およそビューホテル7つ分(東京ドーム数個分)にまで肥大化しいたベルゼブブが地面を殴ったことで、夏になった。
「スゴーイ、一気に暑くなっちゃった♪」
「待て、そこでの反応はそれで正しいのか?」
 間違ったツッコミをする茂武 園一に、アドリアンとかいうらしいヤツが適確な再ツッコミをする。なるほど、的確な射撃であった。
 さて、夏である。
 太陽サンサン。
 向日葵は咲き乱れ、蝉の鳴く声が騒がしい。
 田舎では連続殺人事件とか、そういったものが起きても「真夏の夜の夢」で済まされる。
 そう、夏なのである。
 それはまさに、チームなっちゃんの核弾頭、ナチュール・ゼターが定山渓ビューホテルの支配人を押しのけて温泉の源泉に繋いだホースを、巨大化したベルゼブブに向けた、そのときの事であった。
「凄いね〜、なにがどうなって夏になったのかな〜?」
「グブブブブブ、日本を南半球にじだだげダヨォ」
 驚くナチュールに、ベルゼブブが機嫌よさそうに答えた。降り注ぐ太陽光が心地良いのか、その顔はまるで、日向で寝転がる子猫のような――
「どう考えても無理だ。その地の文は諦めろ」
 アドリアンの狙い澄ました一発が、今度は地の文を撃ち抜いた。なるほど、設定どおり、的確すぎる射撃であった。
 それこそ、ツッコミ役を彼に任せるしかないと、天なる神が固く決意するほどに。
「そーれ! 超魔法少女スーパーピンキーモームさんに不可能はない♪」
「わーい、とりあえずぶっかけろー!」
 園一の操る少女型パペットと、なっちゃんがとりあえず、たぶん温度90度くらい(適当)の温泉を、ベルゼブブにぶっかけた。 「順応力が高すぎだろう、おまえら」
 アドリアンの的確な以下略。撃ち抜いたのはベルゼブブではなく、チームメンバーだが。
「それにな、これだけ巨大になったディアボルスだぞ? お湯をかけたところで、そう劇的な反応は――」
「あち、あちっ!」
 効いてた。
「‥‥‥‥」
 アドリアンは、無言で拳銃の弾丸がなくなるまで、ベルゼブブを撃った。
「ガギーン! べーるぜぶーぶ、バ〜リヤ〜」
 効かなかった。
「‥‥‥‥ムカつく」
 ごもっともです。
「いや違うそうじゃない。論点はそこじゃない。南半球とはどういうことだ!」
 アドリアン、必死に流れに逆らって、脱線した話を元に戻した。今の時点で、敢闘賞は彼に送られる。
「グブブブブブブ‥‥! 地面を殴ッデ地球の向ギを逆転さゼダのだァ!」
「あ、そっかぁ、南半球の1月って夏だもんねー♪」
「どおりで暑いと思っ〜」
 誇らしげに叫ぶベルゼブブに、園一となっちゃんが素直な驚きを見せた。アドリアンの銃口が一瞬、園一のパペットに向けられる。しゃーない。これは、しゃーない。
 さて、その間にも、温泉はずうっとベルゼブブに注がれていたわけで。
「ぷるるん」
 そう、雪を吸収してベルゼブブがシャーベット状になったように、温泉を吸収したベルゼブブは、ツルツルたまご肌(但しヘドロ状)になったのだった――!
「‥‥‥‥」
 アドリアンが、無言で全弾撃ち尽くすまで、ベルゼブブを撃った。
 効かなかった。
「‥‥‥‥ムカつくッ」
 ごもっともであった。

●真夏のアバンチュール(北海道1月)
 ところで、こうして北海道に夏が訪れたわけである。
「ご注文のトロピカルジュースになります」
 ビューホテルの従業員が、銀トレイに乗せたトロピカルジュースを持って、地下一階の水の王国ラグーンに来ていた。
 ここは、冬でも様々なプールが楽しめる、北の有名プール施設。
 普段は、親子連れや若者たちがプールで泳いで楽しい時間を過ごしているのだが、しかし、さすがに今は非常事態。この場所に、人の姿はどこにもない。当り前である。外で、世界の命運をかけた戦いが行われているのだから!
「そう、ありがとう。そこに置いておいてちょうだい」
 ラグーンの片隅、窓から注ぐ真夏の太陽の光を、大きなパラソルで避けながら、大きなチェアに寝そべっているトランクス水着姿のエルネスト・ブノワが、従業員をねぎらい、幾ばくかのチップを渡した。
 一方、外では山が一つ消えていた。
「あら、きれいな色ね」
 運ばれてきたジュースは、鮮やかな空色をしていた。大きなグラスにストローが二本。クルンと回って、ハートを描いている。
「エルー」
 エルネストを呼ぶ声がする。ジュースのグラス越しに、空色に染まった世界。水着姿のメイリア・フォーサイスが、彼に向って手を振っていた。
 一方、外には直径100mのクレーターが出来ていた。
「あら、メイ、かわいらしいわね」
「エヘヘ‥‥、エルが見たいかなって思ったのですー」
 控え目な性格のメイリアにしては、大胆なデザインの水着であった。はにかむその頬はにわかに紅く彩られ、彼女の可愛らしさをさらに強調している。
「フフフ‥‥、嬉しいわ」
 手を伸ばして、エルネストがメイリアの頭を撫でた。心がホワンとして、彼女は心地よさそうに眼を細めている。
 一方、外では月面から目視で確認できるレベルの爆発が起きていた。
「暑いわね」
「夏ですー」
 お互いに見つめ合いながら、その間にはトロピカルジュース。二人は少し気恥かしげに、ストローの先端に唇をつけて――
 見つめ合う恋人達。夏の日差しが、二人を濡らす水の雫を、キラキラと輝かせていた。
 一方、外では地割れが起きていた。
 それでも、二人の真夏のアバンチュールは続く。

●魁! 天竜宮!
 エルネストとメイリアがひと夏の思い出(メモリアル)を作っていた頃、外ではベルゼブブと戦士達の戦いが続いていた。
 戦っているのは、レスター・ヘルツォーク、神代 翼、フリッツ・ギュンター、アビス・フォルイン、マーヤワイエスらである。
「チィッ! なんてぇ野郎だ! 奴の力は無限か!」
 天竜宮高校二号生筆頭にして、地域最大勢力を誇るドラグナー集団「地獄強王駆」初代総長のレスターが、ついさっき消えた山の方を振り返って、頬を伝う汗をぬぐった。ベルゼブブが放った超仙級悪魔魔法「ベルゼブブビィィィィィム」による被害は、北海道の地形を変えるほどであった。
 レスターは山よりも巨大なベルゼブブを見上げて、ふと、震える自分の指先に気づいた。
「ンだァ!? ま、まさか、怖がってるってのか。この俺が、あんなヤツによォ‥‥! この、俺が!?」
 それはまるで、スロウリィと指摘されたときのような反応であった。天竜宮高校に入学して以来、数多の敵と対立し、そのすべてを拳一つでブチのめしてきたレスターにとって、それは生まれて初めて感じる恐怖であった。
「グブブブブブ、弱い、ヨワいなァ」
 ベルゼブブはレスターを見降ろし、チッチッチ、と、指を振る。そこに感じられるのは、絶対的強者の余裕であった。
「ンだ、テメェ、コラ‥‥! 吐いたツバ呑まんとけよ!」
「小ザい、小さイなァ〜。グブブブブ!」
 ベルゼブブは、もはや見抜いているのだろう。レスターが感じている、自分への恐怖を、怯えを。
 そう、遥かな巨体を持つ悪魔が、彼を見る眼差しは、風呂場で見つけたゴキブリに熱湯をブッかけて、その反応を楽しもうとする小学三年生のソレであった。
「随分と情けないのぉ、レスターよ!」
 声がかかる。レスターの恐怖を切り裂くがごとき、太い男の声が。
「テメェ、フリッツ!?」
 レスターが見上げる、ビューホテルの屋上。そこには、「地獄強王駆」とタメを貼る、地域二大勢力の一角、「爆竜覇羅旅団(ヴァルハラ旅団)」の三代目団長であるフリッツが、腕を組んで立っていた。
 天竜宮高校三号生筆頭でもあるフリッツは、今年で32歳になる、ベテラン高校生である。
 年齢ゆえか、そのカリスマ性と懐の深さゆえ、県内、県外を問わず、多くの信派がいることで知られている。レスターとは幾度も争い、対立しながら、しかし、奇妙な友情で結ばれてもいる、ライバルであり、友人でもあった。
「どうした! いつもは小賢しいほどに威勢がいい貴様が、今はまるで借りてきた子猫のようではないか、笑わせてくれるのぉ!」
「テメェ、言いたい事言いやがって!」
 図星を刺された羞恥からか、顔を真っ赤にして怒るレスターに、フリッツは腕を組んだまま呵々大笑。
「何が違うという? ん? あんな化け物程度に気圧される貴様ではあるまい」
「バカ言ってんじゃねぇ! 相手は地球の地形を変えるような化け物なんだぞ、お、俺達なんぞによぉ‥‥‥‥!」
 きつく唇を噛むレスターだが――
「この、バカ者めがァ!」
 フリッツが一喝。レスターは身を震わせた。
「レスターよ、貴様、あれを見てもそんな軟弱な事をホザくというのか!」
「ンなっ!?」
 32歳のベテラン高校生が指差しいた先にあるものを見て、ヘルツッォークが全身が強張る自分を感じた。
 瓦礫と化した近くにあった、なんか民家っぽい建物の屋上に、レスターの親友である神代 翼の姿がある。翼は、レスターとは別の高校に通っているが、家が近くであり、よおくツルんでいた。
 翼は、レスターやフリッツと違って、シャバで生きる一般人であったが、何故かレスターとは気が合って、その交流はい今も続いていた。見た目こそ、女の子のように見える翼だが、その胸には熱い魂が宿る、正義漢である。
「よくも、定山渓を真夏にしたな、許さない。許さないぞ‥‥‥‥!」
 真冬の北海道を夏にされ翼の怒りは凄まじかった。脳髄が、怒りに焼け切れそうになっている。彼の頭の中では、この定山渓で過ごした二日間の記憶が、まるで走馬灯のように巡っていた。
 冬の思い出、大切なみんなと過ごした、冬の思い出!
「北海道の1月は、冬でなくちゃいけないんだ。雪が降ってなきゃ、いけないんだ! この命、燃え尽きても、おまえを、許さない!」
「おい、翼、おまえ、何する気だ!?」
 レスターは感じていた。翼が掲げている両手の上に輝く、強烈なエネルギー、その熱気を!
「あれは、まさか、伝説の熱気玉‥‥!? エンジェリングが、自分の命を燃やしつくす事を代償に、一度だけ放つことができるという‥‥! あれなら‥‥。いや、無理だ! 相手は化けものなんだぞ!?」
「俺の力だけじゃ、ない!」
「う、こ、これは‥‥!?」
 レスターは感じ取った。翼の作る熱気玉。その尋常ではない熱量を。これだけ離れてても、肌がチリチリと焼け付くようだ。ありえない。翼の怒りがどれほど大きくとも、これほどの熱量を生み出す程とは、思えない。ならばこれは――!
「みんなの、思いだ! そうさ、俺の力に、みんなの力を加えて、10倍! さらに3倍の回転を加えて、30倍! そして定山渓ビューホテルの「十勝」だから、なんとなく10倍! 合わせて300倍だァァァァ!」
 翼が作る熱気玉は、もはや小型の太陽に等しい輝きを放つに至っていた。
「これが俺たちみんなで生んだ、大奇跡だァァァァァ!」
「フ、ついに目覚めたか。破滅の暗黒天使よ。貴様の目覚めのとき、余は待ちわびておったぞ」
「マーヤ、どういうことだ、そいつはよぉ!」
 レスターのクラスメイトである謎の転校生であるマーヤが、ドラゴンを率いて低く笑った。
「なんだ、小僧。まだいたのか。ここは戦場。喧嘩しか能のない餓鬼がいてよいところではない。さっさと去ね。余には、すべきことがあるのだ」
 マーヤの瞳に宿る光は、まさに氷の様であった。刺し貫かれ、射抜かれて、レスターは言葉に詰まる。
「さぁ、余が下僕、キティドラゴンよ。紅蓮なる漆黒の炎で、世界を蒼く染め上げるのだ。敵を滅せよ。真なる破滅の将(自称)は、余と暗黒天使だけでよい」
 かくして、マーヤはドラゴンを率いて、地を蹴った。いつか、自分が破滅させる世界を守るために。そう、いつか、暗黒天使と、この場で雌雄を決するために!
 マーヤの放った絶獄覇煌神殺超烈魔法(つまり広域魔法)が、巨大なクレーターを生み出す!
 爆風が、レスターを激しく煽った。
「これでも貴様は、ただ震えるだけなのか、レスターよ!」
 フリッツの言葉が、立ちつくす彼の背中を叩く。
「お、俺は‥‥」
「シャバ餓鬼や女人に戦わせて、貴様はそこに立ったままか! 貴様はその程度の男なのか!」
 踏ん切りがつかないレスター。一度、恐怖に囚われた心は、目覚めの兆しこそ見せても、まだ、そう、まだ‥‥
「フリッツ! テメェこそ、どうなんだ! あいつと、あんな化け物と、ヤり合えるのかよ!?」
 逃げだとわかっていた。しかし、萎えた心を正当化しようとする、悲痛な叫びでもあった。
 だがそれを、フリッツは一笑に伏した。
「無論よ」
 彼は、腰に帯びた二本の魔剣を抜き放ち、
「フフ、まさか、この伝説の「魔剣ぶっ殺しブレイド」と「妖刀ブッた切り丸」を使うことになるとはのぅ」
 不敵に、彼は笑む。そこには、凄絶な覚悟が見てとれた。
「フリッツ、まさか、テメェ‥‥」
 息を呑むレスターに、フリッツは頷いた。
「特攻しかあるまい」
 それは、死をも賭す覚悟がある男だけが発することのできる、信念の声であった。
「なんでだよ、なんで、どいつもこいつも‥‥!」
「いい加減にしろ!」
 呆然とするレスターを、ずっと隣にいたアビスが殴りつけた。
「うぐっ!? ‥‥アビス、テメェ」
 だが、感情が高ぶるまま、アビスは彼の胸倉を掴んで、額がぶつかるほどの近くで、叫んだ。
「いつまでヒヨってんだよ。なんで、わからない! みんな、この定山渓を守ろうとしてるんだよ‥‥。夏になっても、山が消えても、それでも、この定山渓を守ろうって、してるだけなんだよ!」
「‥‥‥‥」
 普段は優男のように振る舞っているアビスの、その怒りに燃える瞳に、レスターは、何も言えなかった。何も言わさぬ迫力が、今の彼にはあった。
「‥‥れよ」
「‥‥え?」
「戦えないなら、せめて守れよ。みんなを! エンダールだろう!」
 言われて、ハッとする。そうだった。天竜宮高校二号生筆頭とか地獄強王駆初代総長とか言っているが、自分は、エンダールだったのだ。
「目が覚めたぜ――アビス!」
 レスターの瞳に、今こそ力が戻る。
「ああ、それでこそ、レスターだよ。やっと、あの頃のあんたに戻ったな」
 アビスは笑いながら、二日前に出会ったばかりのレスターの顔を思い出し、手を差し伸べた。
「翼、フリッツ、好きにやりやがれ! この俺様が、大結界魔法で全部守ってやるぜ!」
「やっと戻ったようじゃのう、世話をかけさせおって」
 フリッツが、二本の伝説の武器を構えて、苦笑した。
 翼の熱気玉が、いよいよ最高潮に達する。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 俺の奇跡よーーーーーーー!」
「爆竜覇羅旅団三代目団長、フリッツ・ギュンター、推して参る!」
 翼の熱気玉が炸裂し、月からでも目視できる爆発を生む!
 フリッツの剣が、大地を裂いて地割れを起こした!
「来いやぁ! 俺ァ、天竜宮高校二号生筆頭、レスターだ、夜露死苦ゥ!」
 そしてレスターとアビスが張った大結界は、発生した余波を完全に抑え込み、ラグーンにいるエルネストとメイリアを見事守り抜いたのだった!
 なお、この項目のキャラクター説明、設定、実力、口調、装備、人格、人間関係、その他大体全部は、大体全部脚色されております。ご了承ください。

●おい、コイツ呪われてんぜ
「男色! 男色!」
 ダールは素敵な笑顔で叫び続けていた。明らかに顔が綻んでいる。
 ダールは55歳でルークス教のストックホルム支部の支部長である。
 彼は歴戦のエクソシストであり、ナイスミドルの気さくなリアリストである。
「男色! 男色!」
 だが、少し照れ顔でそう叫んでいた。
 バリバリ最前線で戦える、確かな実力者であり、マラチオンとか言いだす事もあったが、概ね尊敬される側の人間である。
「男色! だ、男色! だ、だ、男色男色男色男色男色男色男色男色男色男色!」
 それが今は、一秒間に十回も「男色」を叫ぶような有様に! しかも、その後にドヤ顔をするような始末!
 幻が滅すると書いて、幻滅。
 人の夢と書いて、儚い。
 なんていうか、まさにそれだった。
 なんか目覚めてみたら、こう、あれだ、そう、なんと申しましょうか。その‥‥、年甲斐もなく、ムラムラ来てしまいまして。
 そして目覚めてみた。目覚めてはいけない方向に。
「男色! だん! しょ! く! 昔の言い方で、衆道ォォォォォォォォォォ!」
 そのあたりを走り回る、ダール支部長55歳、フンドシ一丁。
 走って階段を駆け上がり、その挙句、窓の向こうに女性(ナイスミドルと言われながら高嶺の花扱いで実際は女性にモテていない中年男性の磨き抜かれた想像力による妄想の幻)が見えて、そのまま窓ガラスブチ破って、アイキャンフラァァァァァァァイ!
 神よ、ルークスよ、許したまえ!
 心で思いながら、口から出る言葉は――
「ホモサピエェェェェェェェェェェェェェェェェン! ス!」
 クモカ魔法のアイテムを装備したがゆえに、呪われ、男色としか叫べなくなったダールは飛行フンドシによって、上空へと飛び出して、飛行、飛行、ぐんぐん上がる高度。更新され続ける、1秒間の連続男色発言回数記録!
 ダール、君はよく頑張った。
 だが死ね。
 ナイスミドル、飛行フンドシの限界に挑戦し、音速の壁に激突し、圧死。
 1秒間の連続男色発言回数記録は、26回だった。

 呪いというものは本当にロクでもない。
 全くもって、ロクでもない。
 何せ、たやすく人の人生を狂わせる。この前なんか、ナイスミドルな支部長が呪いのアイテムによって不慮の戦死を遂げてしまった。ああ怖い怖い。
 でもまぁ、装備しちゃったら、呪われるんだから、仕方がない。
 ああ、これは仕方がない。不可抗力不可抗力。
 だからね、なんていうかね、こうね――
「フンッ! ムンッ!」
「ウハッ!? UHOHOォォォォォォォォ!」
 大浴場でビート・バインが素晴らしく鍛え抜かれた鋼の筋肉を惜しげもなく晒し、それを見てアシルが興奮に鼻血を迸らせていても、うん、これは仕方が無いね。だって、呪われてるんだから。
 ちなみにビートは蘇生の効果を持つクモカ魔法アイテムの影響によって、復活するとともに人に見られることに性的興奮を覚えるようなるという副作用に見舞われていた。
 さっきから、呼吸が怪しい。明らかに、ハァハァ言ってる。ときどき、ウッ、とかいううめき声も聞こえるが、それには触れないであげてください。全部、クモカ魔法ってやつが悪いんです。ときどき、ウッ、とかうめいてるけど!
「ひゃ、ヒャアアアアアア! たまんないYO、ビート! 俺の魔法の杖が効果上昇メ――――→ギド――――→だYO!」
 ドップドップ、出るわ出るわ。
 何がって?
 鼻血が。
 呪いの石鹸を踏むというアクシデントによって転んで頭を打ったアシルは、不幸なことに、鋼の筋肉を可愛く思ってしまう感性を手に入れていた。
 これは可哀想。
「ワハハハハハハハ! そうだろうそうだろう! ‥‥いいぞ、もっとだ。もっと見てくれ。この俺を、この、俺の身体を! ‥‥うっ!」
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜、ビート、カッコイイNE!」
 ビューホテル地下の大浴場をほぼ貸し切り状態にして、ビートがポージングでその筋肉を見せびらかし、うめく。
 そしてアシルは、「キュン♪」、となって、激情を破裂させると同時に、鼻の中の毛細血管も破裂させていた(そろそろ2リットル)。
 外では、ビートの連れているキティドラゴンが必死に戦っていたりするというのに!
 いや〜、本当に、呪いというのはロクでもないな。

「?」
 その頃、呪われながらも守りの指輪によってその効果が完全に無効化されているシア・ラストラルは、定山渓ビューホテルのバイキング料理を楽しみつつ、呪われた気がしたが別にそんなことはなかったのだった。
 いつの世にも勝ち組はいる。
 これは、そういうお話であった。

●最終決戦! 定山渓、危機一髪!
「グブブブブブブブブ、ひザジぶりの出番だねぇ〜」
 メタネタだった。
 そして世界の危機である。
 超巨大たまご肌シャーベットベルゼブブによって、地球は上下が逆転し、いろいろと大変なことになっている。
 それはもう、想像を絶する状況であり、筆舌に尽くしがたい状態である。
 よって、詳しい中身は書かない。絶してるから。
「ごのまま、北海道は夏になっでるドいいんダヨね〜」
 太陽サンサン浴びながら、ベルゼブブはデロデロと笑う。
「お待ちなさい!」
「何者ダ!」
 突然聞こえてきた声に、ベルゼブブはその巨大な頭を左右に振って見渡す。すると――太陽の光を受け、ベルゼブブに影を見せる一人の女性が! 「四季の一つであり、一年の中で最も寒い期間、季節を指す。二十四節気や旧暦の用に、一年中で最も太陽の高度が低く夜が長い期間を指すこともある。北半球では冬至後の1月〜2月頃に気温が低いことが多く、南半球では夏至後の7月〜8月頃にあたる――」
 影は、読み上げる。最後に、ひときわ力を込めて、
「人それを――冬という!」
「何者ダ!」
「悪党に名乗る名前はありません! 須経 蘭華です!」
 名乗った。
「スジャーター・バニヤンです!」
 さらに名乗った。
「柴神 壱子だよー!」
 さらにさらに名乗った。
「シア・ラストラルです。よろしくお願いしますー」
 名乗る名前しかなかった。
「グブブブブブ、カバイイ小娘共が何のご用ガナ〜」
「フフ、余裕ブッこいてられるのもここまでですよ。この悪魔め」
 蘭華が、ベルゼブブを見上げて、一歩、踏み出した。
「皆さんとの絆の力。見せてあげましょう。スジャーターさん!」
「これが最後の錬金です」
「む、グ!?」
 初めて、ベルゼブブはたじろいだ。たかが小娘。たかが人間。で、あるはずなのに、感じる威圧。重圧は、これは、一体――!?
 身構えようとする巨大悪魔を前に、スジャーターは自らが持つ最高の素材を用いて、究極の錬金に挑む。
 まず、汲みたての水を用意します。
 軟水がベターです。
 水を沸かしてお湯にします。
 沸騰直後が良いでしょう。ぬる過ぎると香気成分がよく出ません。
 容器には陶磁器か銀製品のティーポット、あるいはガラス製のテイーサーバーを使いましょう。
 何より大事なものは色と香りです。
 カップには白色が映えるものがよいでしょう。
 また、香りが広がるよう、浅いかたちのものを選ぶとなおよいです。
 最後に、注いだ紅茶に錬金素材をブチこみましょう。
 定山渓温泉の聖なる力が一点に集まった究極錬金紅茶の完成です。
「って、紅茶カよ!」
 身構えていたベルゼブブ、渾身の超巨大裏手ツッコミ。だがそれを、シアのパペットが身を呈して防いだ。
 質量的にあり得ないけど、なんとか、ギリギリ、防いだ。きっと、こう、ギリギリ。
 一方シアは、蘭華と共に優雅にティータイムを楽しんでいた。
「もっきゅもっきゅ! このケーキ美味しいね!」
「ありがとうございますー。初めて作ってみたんですけど、上手くできてよかったです」
 自作のケーキに舌鼓を打っている壱子に、シアは恥ずかしげにしながらも、嬉しそうだった。
「スジャーターさん、紅茶の腕が上がりましたね。とっても美味しいです」
 こちらは、蘭華である。白のティーカップに注がれた紅茶の香りを楽しみながら、口に広がる奥深い甘みと味わいに、酔いしれる。
 スジャーターは照れつつ、「はい」と頷いた。
「おー! こっちもケーキも美味しーねー!」
 友人と共に過ごす、こんな、のんびりとしたティータイム。
 ああ、こんな時間が、ずっとずっと、続けばいいのに。
「戦場ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 世界初、仙級ディアボルスのツッコミであった。
「フ、そんなことは承知済み。そして、キタキタキタキターーーーーーーー!」
「ナ、なんダド!?」
 紅茶を飲んでしばし、蘭華の身体が、金色に輝き始める。
「主は申されました、そろそろ終わりでいいんじゃない? と! 仲間の力を受け取って、神の武器をくらいなさい!」
「お、オノレェェェェ、メタネタをォォォォォォォ!」
 ベルゼブブが、自分を棚に上げて蘭華に絶叫する。そして、彼女の手には、金色に輝く――
 まるで暗黒を凝縮して塗り固めて凝固させた、禍々しいほどの虚無を漂わせる、星すら飲み込む圧倒的な力の具現、闇の鞭。
「必殺、ブラックホールウィィィィィィィィィップ!」
「ゴ、ゴンナ、バガなァァァァァァァ!?」
 闇の鞭に絡めとられたベルゼブブの身体が、見る見るうちに闇に吸いこまれ、そして、消えていく。
 いかに巨大な闇でも、さらに巨大な闇で呑みこみ封印する。それが、蘭華の得た神の武器、ブラックホールウィプである。
「やりましたね、蘭華さん」
「勝ったー!」
「美味しい紅茶ができてよかったです」
 集まる仲間達。そして、蘭華は彼女達とねぎらい合い、
「ええ、これで、北海道は私達のものです」
 野心を露わにしやがった。
「私が得た神の武器があれば、もはや他に恐れるものはありません。全てを封印してしまえばよいのです。私達に逆らう者は全て封印します。全て全て全て、封印します。地球は逆転したままで、やがてこの定山渓以外の環境の激変や生態系の大規模破壊で全滅するでしょう。それでも、よいのです。この定山渓で、私たちは生きている。この場所を、私達、生き残った人類の故郷として、私と皆さんは新たな人類の祖として君臨することさえできれば、それで――」
 だが――
「ザゼるガァァァァァァァァァァ!」
「なっ!?」
 闇より、封印されたはずのベルゼブブが這い出てきた。流石は腐っても仙級ディアボルス!
「させるか!」
 飛び込んできた影が、魔法の剣でベルゼブブの腕を切り裂く。
 現れたのは、ライトアーマーに身を包んだヴォルセルク、キュリロスである。彼はベルゼブブの姿を見るなり、嫌悪感に顔をしかめる。
「全く、汚らしい。ただの公害ではないか。フランソワ、今だ! やってしまえ!」
「フ。わかっているさ」
 真っ赤なバラを片手に、麗しきフランソワが、ベルゼブブを指差す。
「醜いディアボルス君。君の居場所はこの世界にはない。さぁ、消えたまえ」
「な、ナニヲォォォォ‥‥」
「僕は、僕の仲間達、アシル君(鼻から出血多量死後、大回復で復活)、ビート君(興奮しすぎて脳の血管が切れて死後、大回復で復活)、キュリロス君の協力により、神の武器を得た。さぁ、退きたまえ。神が与えたもうた、僕の美しさの前に」
 フランソワが麗しげに腕を高く掲げる。
 なんということだろう。
 神々しい。
 凄く神々しい。
 神々しさが圧倒的でなおかつ麗しい。
「くらえ、この愛! フランソワビーーーーーーム!」
「ぎゃー、ヤァァァァァラァァァァァレェェェェェタァァァァァ!」
 ドカーン。
 ベルゼブブは死んだ。
「やぁ、危ないところだったね」
 ベルゼブブの死後、フランソワは蘭華に向かって微笑みかけた。
「どういうおつもりですか?」
 蘭華はフランソワに向かって、硬い声で質した。フランソワは薔薇を手に華麗にワンターン。
「何、気にすることはないさ。僕はただの通りすがりの麗しいフランソワさ。こっちは、ただの通りすがりのキュリロス君。こっちは、ただの通りすがりのアシル君に、そしてただの通りすがりのビート君だ」
「そういうことを聞いているのではありません。あなたも神の武器を手にしているのですね、ならば‥‥」
「おっと、争うつもりはないよ。僕たちが争うことは、美しくない。まだ、戦いは終わっていないのだからね」
 それは、どういうことか、と訊ねようとして、感じた気配。圧倒的な、邪悪な気配。それは――
「上です!」
 なんと、空を見上げると、そこに一つの人影が。
「クックック、なのだよ〜。ベルゼブブがやられたのだよ〜」
「しかしヤツは四天王一の小物に過ぎないのだよ〜」
「次はおにーさんが相手なのだよ〜」
 一人三役。
 謎の存在KKK、すなわち、K(今回の)K(件は)K(コイツのせい)。
 まさしくそれこそ、真の敵なのであった。
 だからクモカ魔法は呪われるんだよ。ラスボスだもんね、しょうがないしょうがない!
「ゴンスケ、クロ、かじっちゃえー」
「ワン」
「ワン」
「あ、やめて、やめて、なのだよ〜。おにーさんは美味しくないのだよ〜。ガジガジしないで欲しいのだよ〜。キニスもカオスもなくすから許してほしいのだよ〜」
 なんとか、間一髪、壱子の自己犠牲ともいえる決死の行動によって、KKKは退散した。そして定山渓に平和が戻った! ついでに逆転した地球と破壊された定山渓もスタッフが直した!
 しかし、KKKという圧倒的脅威はまだ残っている。
それを知るには十分すぎる数分間であった。
「わかっただろう? 世界は、そう簡単には君のものにはならないということさ」
「ええ、わかりました。けれど、だからこそ、私達のものにしたくなりました」
 蘭華の決意を込めた瞳に、フランソワは「それもいいかもしれないね」と、微笑む。麗しい。実に麗しい。
「だが、僕達も簡単には支配されたりはしないという事を、覚えておいてほしい。それでは、オルヴォワール」
 ただ通りすがっただけのフランソワ達は、こうして去っていった。
「蘭華さん」
 スジャーターや、シアが、蘭華を不安げに見つめる。
 蘭華は努めて笑みを浮かべて、「大丈夫ですよ」、と、笑顔を浮かべた。そして、思った。
 必ず成し遂げてみせる、と。世界を、必ずこの手に収めてみせる。今はできなくとも、いつか必ず――

 そう
 私達はようやく上り始めたばかりなのだから

 この
 はてしなく遠い
 定山渓かっぱロードを

 未完!

 ご愛読ありがとうございました。今後もREXiにご期待ください!

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